• 林康生君(高3)、第64回国際数学オリンピック日本代表に選出される

林康生君(高3)、第64回国際数学オリンピック日本代表に選出される

2023.04.24

  • 2018年度入学
  • 数学科

第64回国際数学オリンピックの日本代表に選出された林康生君(高3)にインタビューしました。

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数学科(以下、数)林君、この度の快挙、まことにおめでとうございます。

林君(以下、林):ありがとうございます。

数 :狙っていて、それが実現した感じですか?

林 :そうですね。それにあたっては、数学部の新井先輩に色々お世話になりました。

数 :そうだそうですね。新井さんは昨年度の国際数学オリンピックのオスロ大会で銀メダルに輝いていますから、本校としても二年連続の栄誉となり光栄この上ありません。

さて、かつては日本代表となる生徒の在籍校は限られていました。しかし、近年、様々な学校からの選出となっている印象です。これはなにか原因がありそうですか?

林:Twitterで手軽に数オリに親しめるようになりましたので、競技人口のすそ野が広がったゆえのことと思っています。

数:なるほど。そういうことですか。さて、林君が数学オリンピックにチャレンジしようと思ったきっかけを教えてください。

林:兄が取り組んでいたのでその影響です。もっとも、一緒に取り組むということはあまりなかったのですが。

数:中学生のジュニアオリンピックからの挑戦でしたか?

林 :はい。わたしは特に幾何をやるなかで、自分自身の数学好きな部分が認識された気がしています。

数:幾何が導きましたか。では中高時代は一貫して数オリに賭けた青春でしたか?

林 :いえ、必ずしもそうではありません。私は生物部員ですし。数オリからリタイアしていた時期もあるのです。でも、なんというか、自分が本当に数学が好きなのだ、という部分が頭をもたげてきて、再びこの道に戻りました。

数:そうでしたか。そういった時期があった上でのこのたびの快挙ですからなおのこと感嘆します。その、リタイアした時間があったのも今回の出場につながった部分はある感じですか?

林 :具体的にどうこうというのは分かりませんが、なんというか、言わば没頭して問題とにらめっこをし続けていたのが、ちょっと頭をあげて、辺りを見回したら、見えなかったものが見えてきたと言えなくもないですね。

数 :なるほど。分かります。本当によく分かります。それにしても出場者約五千人。内、成績優秀な生徒25人に絞られ、代表選抜合宿を経て最終的に6人のみが栄冠を受ける・・・。一体、毎日どのくらい数オリ対策に費やすのだろうか?と興味をもつ向きもあろうかと思います。その辺りはどうですか。

林:わたしは受験生でもありますから、それに取り組む時間は2、3時間くらいのことが多いです。たまに5時間に及ぶこともあります。

数 :バランスを十分にとっているわけですね。どっぷり浸りすぎないのもあるいは林君にはよいのかも知れませんね。わたくしは唯唯感心するばかりですが。

最後に、本校には数学オリンピック出場を夢見る生徒も少なくありません。在校生に向けてメッセージをもらえれば嬉しく思います。

林 :高校生ながら、大学の数学科や大学院の数学専攻で学ぶような高度な数学を達者に理解する人たちがいます。しかし、そういった人だから数オリの問題も達者に解けるか?と言えば、これは必ずしもそうではありません。逆もまた然りです。しかし、お互いに、自分の不足な部分を極度に恥じるというか、あるいは、両方できなくてはならないのだという、いわば強迫観念に駆られているのではないか、と思われることが少なくありません。わたしは、このことを非常に残念に思っています。つまり、両者が要求されている能力は異なる部分が少なくないのだと思うのです。とはいえ、同じ数学なわけですから、解けなくてはいけない、とか、理解しなくてはいけない、などと考えず、楽しんでやるべきではないでしょうか。これを在校生の皆さんにお伝えしたいです。

数: いやはや、ついつい身を乗り出して息をのんで聞き入ってしまいました。まさに、正鵠を射ていると思われます。林君、どうぞ世界を舞台に、存分に「楽しんで」きてください。

林: ありがとうございます。その末にメダルがついてきたらこんなに嬉しいことはありません。今日はわたしの話を聞いて頂き、本当にありがとうございました。

数: いえいえ、こちらこそ本当にありがとうございました。在校生の皆さん。どうぞ、林先輩の後続となるべく、奮励を期待します。

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なお、林君はこのインタビューの後、優れた数学研究や数学競技実績をあげた在校生などに本校数学科から授与される松岡文太郎賞(海城数学科賞)の栄誉に輝きました。

本賞は本校最古の数学教員にして明治期の著名な数学者であった松岡文太郎先生の御遺徳を偲び、御遺族御承認の下で制定されたものです。

歴代の受賞者には、国際数学オリンピックメダリスト2名をはじめ、東大理学部推薦合格進学者、塩野直道賞受賞者、カリフォルニア工科大進学者、マサチューセッツ工科大進学者をはじめ、錚々たるOBおよび本校への留学生が並んでいます。

担任の元木先生と共に